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保育園入園や保育時間体制、親の介護体制の整備なども必要だろう。
だが、こうした社会的支援だけでは限界がある。
労働内容そのものの見直しが必要なのである。
こうした正社員共稼ぎが無理なケースもある。
すると、どうしても夫婦の一方の稼ぎ一に対して、他方が〇・五あるいは〇・二を稼ぐというモデル、または片稼ぎモデルということになる。
これらをかりに一・五モデル、一・二モデル、一・〇モデルとしよう。
それは具体的にほどのようなものであろうか。
(1)一・五モデル〇・五を稼ぐのはかなり大変である。
かりに、一方の年収が五〇〇万円とすると、他方は二五〇万円稼ぐというモデルである。
〇・五とはいってもかなりの労働量だろう。
かりに時間給一五〇〇円でも年に一六六七時間働かねばならない。
一日七時間労働で二三八日勤務しなければならない。
時間給一〇〇〇円だったら二五〇〇時間労働である。
(2)一・二モデル〇・二だとずっとパートタイマーという感じになる。
実際多くあるケースだろう。
かりに年収一〇〇万円とする。
時間給一〇〇〇円で一〇〇〇時間、時間給七〇〇円で年間一四二九時間というわけだ。
(a)一・〇モデル一方の収入が高いと、片稼ぎでも子育てはできる。
他方が専業主婦あるいは専業主夫というパターンである。
すでに第2章で述べたように、片稼ぎモデルがいつでもいけないとは私は考えていない。
問題なのは、その役割が性によって固定されているということにある。
性による固定化をいかになくすかがポイントである。
専業主夫の地位向上策こそが必要なのである。
世の中は「稼がない者」を低位におく傾向が強く、資本主義だから仕方がないという人が多いのは事実である。
女性は自らを「商品化」することが社会的地位向上につながるという考えが現在の主流であり、それなりに正当な考え方である。
しかし、もしその主張が夫婦共稼ぎでなければならないとするならば、それが望ましいのかどうかは必ずしも自明ではない。
再考する価値があると私は思う。
私たちは男性がフルタイム労働することをあまりにも当然視しすぎていないだろうか。
さて、このモデルの最大の問題は離婚により夫婦でワンセットのモデルを解体しなければならなくなる場合である。
一般には、家事労働をもっぱらするほうのリスクが大きい。
家事労働の専門性が評価されるシステムがないからである。
家事労働は誰でもできると考えられている。
離婚すれば、収入のある仕事をしなければならない。
すると不熟練労働しかないということになりかねない。
キャリア形成のリスクである。
したがって、専業で家事労働をする人も、このリスクに対処すべき職業能力の形成に努める必要がある。
能力開発の中心が企業での仕事を通じておこなわれることが多いため、きびしい。
出産の前に一定のキャリアをつくっておこうというのは、必要なリスク対処策かもしれない。
夫婦ともに一日二四時間拘束されるというイメージの正社員では、子育ては時間的に困難である。
こうしたイメージの正社員の稼ぎを一としたときに、一人あたりの収入は少ないが、先にあげた条件をみたす正社員を考えることは不可能ではないだろう。
たとえていえば、双方とも正社員で、八〇・八十〇・八)モデル、あるいは八〇・五+〇・五)モデルである。
収入が一ではなく、〇・八あるいは〇・五にとどまる原因はいくつかある。
たとえば、残業を拒否できる権利、転勤しなくてすむ権利などの対価であったり、キャリア形成上の遅れによるものであったりする。
こうした伝統的な正社員像に対する各種の個人の権利や職業能力上のハンディが報酬に跳ね返ることを、個人は受け入れなければならないだろう。
そうした格差が納得性のあるものであれば、企業も従業員全員に無制限の拘束を強いる高コストの正社員よりも有利な人事管理ができるはずである。
なお、ここでいう〇・八とか〇・五というのは、あくまで平均である。
能力主義や成果主義がより公正に用いられれば、制約のない正社員よりも多くの収入を得たり、昇進したりする人も出てくるのは当然であるし、またそうでなければならない。
この問題は章を改めて論じることにしよう。
参考-ヨーロッパの賃金カープ共稼ぎを考えるうえで、ここに貴重なデータがある。
日本労働研究機構『データブック国際労働比較二〇〇二』に掲載されているデータである。
製造業に限定されるが、年齢階級別と勤続年数別のホワイトカラー(正確には、管理・事務労働者)の賃金プロファイル(賃金カーブともいう)を示したものである。
なお、元のデータは日本が労働省『賃金構造基本統計調査』(一九九七年)であり、EUが治産泣議云ご紆芸風翳り荘監訂-思いである。
賃金額については日本が月所定内給与、EU各国が月総収入額である。
まず、年齢間格差をみておこう。
縦軸はそれぞれの年齢層の平均賃金を示している。
いずれも二〇~二四歳の平均賃金を一〇〇としたときの賃金格差である。
かりに年齢とともに賃金が上昇することをもって「年功的」とするならば、日本はたしかに年功的だといってよいだろう。
だが、意外なことにフラソスやイタリアも日本に劣らず年功的である。
旧西ドイツ地域でもそれはいえる。
スウェーデンはその傾向は最も弱い。
なお、フラソスやドイツ、イタリアでは、高年齢者の労働力率は低いから五五歳以上の数字は要注意である。
20~24歳の平均賃金を100とする。女性の場合は、賃金上昇の割合ほどこも男性よりも低い。
しいていえば、フランスとイタリアが傾斜が大きい。
日本は旧西ドイツ地域を下回り、スウェーデンやイギリスなみである(図表3-10b)。
男性はフラソス、イタリアなみ、女性はスウェーデンなみである。
その結果、性別賃金格差は男女とも日本が一番大きくなる。
次に、勤続年数格差をみよう。
縦軸は勤続年数○~一年または○~二年を一〇〇としたときの賃金格差をとったものである。
勤続年数別にみると日本のとくに二〇年以上の上昇率が著しいことがわかる(図表3'11a)。
中高年ホワイトカラーはヨーロッパ諸国と比べて、賃金の傾きが急なのだ。
はかの国では、三割程度で勤続効果が低い。
最後に、女性をみておこう。
男性同様、日本の二〇年以上の勤続者の賃金の傾きは急である(図表3-11b)。
ただ、こうした女性は残念ながら日本では少ない。
対象となる勤続二〇年以上製造業ホワイトカラーでみると、男性が約九万五〇〇〇人に対して、女性は一万人弱にすぎない。
わずか一〇分の一である。
ここでも、スウェーデンのプロファイルは印象的である。
勤続効果はまったくない。
つまり、長年働いても賃金はまったく上昇しないのである。
女性の場合、先にみた二〇代前半と後半の年齢での賃金格差は学歴差の可能性が高い。
日本でいわれるようなキャリア形成があるのかどうか不思議に思うほどの平坦さである。
初任賃金がほぼずっと続くわけである。
こうした賃金構造のなかで、スウェーデンでは共稼ぎをしているわけである。
日本流に考えれば、八〇・五+〇・五)というパターンであろうか。
この最大のメリットは、男女間の稼得収入格差がないために(ただし、スウェーデンでは男性に多い職業と女性に多い職業がかなりはっきりしているという意味で職域分離は大きく、この点については批判が多い)、収入差による離婚リスク格差が小さいことであろう。
しかし、何年勤続しても賃金が上昇しないとすれば、キャリア形成意識は弱まる。
むしろ、仕事につく前の学歴や資格がものをいうことになる。
それは職業意識の強さという意味で利点もあるが、向上意識は低くなる。
そのような生き方、働き方があってもよいが、すべての人がそうした働き方でよいとは思えない。
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